アーティストとデザイナーという一見似たような職業があります。結局何を持ってアートとデザインを区別しているのか、その定義は何か。
実際にアーティスト兼デザイナーである筆者ACの経験をもとに考察しましたので、参考にしてみてください。
目次
- 「表現者の意思」
- 考察1 経験則
- 考察2 深層心理
- まとめ 「自己満足と他者満足」
「表現者の意思」に委ねられたものである
言葉としての定義は様々あります。
例えば、
アート・・・美の創造、表現、及びその作品。問題提起。
デザイン・・・機能や生産工程を考え構成するもの。問題解決。
※様々な意見はWikiや他のブログでもたくさん紹介されていました。
正直、これらは言葉を入れ替えたとしてもある程度成り立ち、言ってしまえば「私はアーティストである。」「これは美を追求したデザインである。」という発表の仕方次第でどちらとも捉えられるのである。さらに現代社会における呼び方問題もあるだろう。
この「アート」「デザイン」の定義づけ論争の中で、私なりに共通点を述べるならば、決定権が表現者自身であるということだ。
経験則
当時私は美術大学を受験するため、美術絵画予備校に通っていました。
主に鉛筆や木炭でのデッサンの講習、そして色彩構成などと呼ばれる色彩学に基づいた平面表現、とにかくアートもデザインもどちらもがむしゃらにやっていたと思う。
そこで講師の方が問いました。「アートとデザインの違いってなんだと思う?」
そこで私は、デッサンとか、自分にしか描けない絵がアートで、逆に色彩学を習った人は全員が描ける色彩構成のような絵がデザインではないか。と答えました。
講師「それも正解だが、私の考えはこうだ。その作品が世に出たときに1人でも評価してくれる人がいればアートであり、万人受けするものがデザインだ。」
私は割と納得がいった。評価してくれる人が少なければアート寄りだし、多ければデザインなんだと。
その後美大を卒業し、デザイナーとなった私が感じることは、講師の方が言ったあの定義付けは結果論であり、本質ではなかった。
しかし、あの時の言葉を聞いて自分のとった行動こそが本質であったのだ。
深層心理
私の制作は「アートとは?デザインとは?」という問いに左右されることになった。
「とにかく自分が好きな表現をしよう!皆には理解されないかもしれないけど、趣味の範囲でもいいや」と思ったものは結果的に私はアートと名づけた。
「多くの人に理解されたくて、あわよくば企業の目に留まり商品化されたい」と思いながら描いた絵、作った作品はデザインだと思い込んだ。
私なりに言語化するならば
「アート=自己を出発点としたもの」
「デザイン=他者を終着点として考えたもの」
まとめ 「自己満足と他者満足」
アートは「自己満足」、デザインは「他者満足」
より厳密に言えば、
「自己満足を目指した行動によって創造したもの」と「他者満足を目指した行動によって創造したもの」である。
そして現代社会で”職業”とされているアーティストには二種類おり、真の意味で自己満足的な作品を発表し、結果的に人に評価されている人。もう一つは自分の作品によって他者になんらかの影響を与えたい、与えられると信じて作品を発表する人。後者の場合はデザイナーとそう変わらない。
対価として金銭を受け取る”職業”として成り立たせるためにはほとんどの人がデザイナーに分類されると考える。対価を得る必要のない立場での制作、子供が描く絵はまさしくアートだと言える。
アートは理解不能だというが、これは正しいのだ。そもそも理解されるために制作したわけではないのだから。
最後に、
予備校生時代の講師の言葉「その作品が世に出たときに1人でも評価してくれる人がいればアートであり、万人受けするものがデザインだ。」
これは教育者として正しい言葉だった。
アートとは何か、デザインとは何か、そんなことを考えながら日々創作に勤しむことこそ表現者としてのあるべき姿なのだと思う。
異論は認める。
AC