東京藝術大学を筆頭に東京五美大(武蔵野美術大学、多摩美術大学、東京造形大学、女子美術大学、日本大学芸術学部)など日本の美術大学を目指す学生は多く、その倍率も非常に高い。
実際に筆者が経験した向いている人、向いていない人についてお話ししたいと思います。
①.受験〜合格まで
美大受験は一般の大学の受験方式(センター試験など)とは違い、実技を伴う試験が行われます。
学部や学科によって違いますが、鉛筆or木炭デッサン、水彩画、平面構成、彫刻実技などがあります。これらの試験に備え、多くの美大を目指す学生は高校生のうちから美術予備校へ通うことがほぼ慣習となっています。
特に最初に並べた東京5美大以上の学校の場合は高度な実技レベルが求められ、高校2年生から予備校に通っても遅いと言われるくらいです。(私の感覚的には2浪程度は当たり前という感じでした。)
また、同時に通常の教養科目(3〜5科目)の勉強も行いますので、過酷な受験期を過ごすことは必至です。
これが美大への第一関門です。
これを乗り越えるためのポイントをお伝えします。
1-1.経験を過信するな。
今まで絵が得意だった。高校生まで美術や技術家庭科の評価が5である。
こんなものを過信してはいけません。美術大学を目指す学生は全員が評価5は当たり前です。そして、漫画のイラストが得意だったりという経験は美大受験にはほぼ役立ちません。(かなり強い口調で申し訳ないが、重要なことです。)
絶対的初心者の立場から挑みましょう。
1-2.基礎を学ぶ意欲があるか。
美術予備校でデッサンを習い始めると、いかに今まで自分がテキトーな絵を描いてきたかを思い知ることでしょう。アタリのとり方から、陰影の付け方まで基礎の基礎を学ぶ意欲が大事です。ここで変に自己流を通すようでは美大には進めません。
個性を生かすのは基礎を学んだ後で十分!むしろこの基礎をマスターすることで今後自身の制作クオリティも上がることでしょう。
1-3.ゾーンに入れるか。
実技試験の試験時間は大体3時間から8時間ほどです。長いように感じますか?
まず、画用紙に向い鉛筆を持ってからは、一秒たりとも休む時間、悩む時間はありません。制限時間内に他の受験生よりも上手な絵を描かなければいけないのです。
周りの人の絵が視界にチラついたり、鉛筆を削る音が気になったりするかもしれませんが、そんなものはシャットアウトです。
自分の世界に没頭し、集中できる人間が勝ち残ります。
予備校でトレーニングしましょう。
②.入学後〜卒業まで
正直、過酷な美大受験を突破して、燃え尽きてしまう人が大半です。
そして、どこの美術大学でも共通する教育方針(日本の教育方針とも言える)が
「自身が主体性を持って行動し成長すること」です。
2-1.受け身ではなく、自分で行動できるか。
美術大学に入学後は受け身ではいけません。
一般の大学では自動的にカリキュラムが組まれていたり、学力的なノルマが設けられていることが多く、その中間目標をクリアしつつ卒業を目指します。
ところが美大ではそうはいきません。
自分が卒業までに何を学び、どんなスキルを身につけていきたいのか、しっかり目標設定した上で、授業を選ばなければいけません。また教養科目以外に関してはこれまで触れてこなかった専門分野の勉強をする子になります。
とにかくチャレンジ精神を持ち続け、単位を取得していくことが大切です。
2-2.プレッシャーに耐えられるか
例えばデッサンの授業。本格的な彫刻のモチーフやモデルが用意されることもあります。このような整った環境はさすが美大の特権ですが、実際に行うのは受験期と同じ「デッサン」です。
そして、描き終わると教授や外部講師による「講評会」が待っています。
教室に絵を並べて、全員の前に立たされ指摘を受けます。良い評価を受ければとても自信になりますが、大体はけちょんけちょんに酷評されます。とても恥ずかしい思いをすることでしょう。
ただ、これに懲りず、その場その場で知識と技術を吸収し、いかに自分の成長に繋げていくことができるかが重要ポイントです。
よくありがちなのは、このような講評の場で評価が低く自信を無くしてしまうパターンです。
やる気のない学生は勿論ですが、次の作品提出で上手にアウトプットのできない学生は置いてきぼりになります。正確には向上心たっぷりの仲間に取り残されると絶望し、独学へと逃げて諦めてしまうケースが多いです。
戦場で生き残る強い意志が必要です。
2-3.安定した就職先はない
東京藝大は美術版の東大、
武蔵美、多摩美は美術版の早稲田慶應とも言われるように、将来は安泰かと思うかもしれません。
がしかし、大学名ブランドだけでは就職はできません。
多くの美大生は自身で培った技術力を武器にオリジナリティ溢れる創作を仕事にしたいと考えます。画家として、フリーのアーティストとして、大手デザイン業界のインハウスデザイナーとして働くことを夢みますが、そう現実は甘くありません。
デザイナー職自体は(特に東京では求人数は)沢山ありますが、業界の給与水準はかなり低く、業界の悪しき労働環境は超絶ブラックです。> < ;;
多くは小売業界、出版業界、IT/Web業界の制作部や企画部へ進む人が多いことでしょう。(筆者自身もその口です。)その中で揉みに揉まれ、常にクリエイティブ精神を絶やさず成長し続けることが、将来への道だと言えます。
まとめ
沢山不安になることを煽ってしまいました。
「美大に向いている人」というテーマでお話をしましたが、
結論としましては、この記事を読んだ上でなお果敢に立ち向かおうとする人こそ、美大に進んで成功する人なのだと考えています。
また、美大というはアーティストやデザイナーを志す人の必須事項ではありません。専門学校や独学でも素晴らしい成功を収めている人が沢山います。実際に社会に出れば実力主義です。学歴や偏見はほとんど関係ありません。
刺激的な、クリエイティブな人生を進みたい人はぜひ挑戦してみてはいかがでしょう。